令和2年6月7日に開催された日本数学教育学会の理事会において,新しい理事長に選出されました.微力ながら学会のために尽力してまいります.どうぞよろしくお願いいたします。
折からの新型コロナウイルス感染症の全国的な感染拡大の状況は,全国の学校における長期の臨時休業を余儀なくし,その後も社会全体に未曾有の影響を与えています.先行きが不透明なこの状況下,世界全体が,長期にわたり新型コロナウイルスとともに生きていく社会のあり方を模索する試練の時代を迎えています.このような状況にあっても,二年前に創立百周年を迎え「次の百年」への歩みを始めた本学会は,歩みを止めるわけにはいきません.以下に,学会にとっての重点課題を列記してみたいと思います.
第一は,学会の生命線である数学教育研究の一層の推進と実践の改善への寄与です.この点では,全国各地区の組織・団体との連携による情報共有・発信の強化が欠かせません.そのためには,各種の研究大会の充実,学会誌を中心とする学会の学術情報発信の機能強化,そして学会誌自体の電子化についても検討する必要があると考えています.
第二は,公益社団法人としての本学会の機能強化で,本学会はステークホルダー(利益関係者)への関与を一層明確にする必要があります.会員の皆様はもとより,広く学校関係者,子ども達と保護者,地域社会の人々,国や地方自治体,そして数学教育関連の企業等もその対象です.公益性をもつ本学会が,社会的責任を果たすための方策を,具体化していく必要があると思います.
第三は,若い世代を巻き込むメンバーシップの強化です.学校教員の年齢構成が大きく変容した現在,次世代の数学教育を担う若手教員や学生・大学院生が学会に多数入会していただき,数学教育研究を目指す若い世代,教科に強い教員が結集する重要な場所としたいと思います.
第四は,数学教育研究の国際化への対応と本学会からの世界への研究成果の発信です.世界的に進行する数学カリキュラム改革動向の把握に基づく次世代の数学カリキュラムの開発,日本発の「授業研究」による教科教育研究の推進を一層充実していく必要があると考えています.
現在直面するこの試練の時代を乗り越え,数学教育研究の推進と学校や社会での数学教育実践の向上に本学会が寄与できるよう,会員の皆様のお力を結集していただくことをお願いし,ご挨拶といたします.
公益社団法人日本数学教育学会 会長